『雨上がりの虹』
冬の、とある日、驟雨の去った雨上がりの小道を歩いていた。
空はやけに明るかった。
驚いたことに、そこに虹の架け橋が渡っていた。
ほんと、もう、虹を見たのは、いつのことかわからないほど遠い昔の記憶だった。
そんな、光と水の物理現象が、存在すること自体、疾うの昔に忘れてしまっていた。
それにしても美しい。
この世のものとも思えない。
まるで、この地にまみれた夢のかけらが、いまひとたび空に舞い上がって、光の洗礼を受けたかのようだ。
しばし、そこに立ち尽くし、ただ呆然としていた。
写真:村上 馨 (2004年12月 松江市下東川津町にて撮影)