閉じた世界

高杉 露樹

吹きすさぶ風よ ぼくはおまえを愛する ためらうことも媚びることもせず 猛々しいまでの無遠慮さでもって ぼくの歩みをはばみ 遥か天の高みまで 息もつかずに駆け抜けていく 遠く小さく 誰かがとぎれとぎれに叫んでいる 聴け 世界は閉ざされた牢獄だ 見せかけの自由と悦楽と悔恨という牢格子で 幾重にも閉ざされた 出口を持たないシステムなのだと そうだ 頬をなぶる風よ 冷ややかな眼差しでもって眺めるがいい ぼくはとっくの昔に翼を失い 孤独の鎖につながれながら 終日 灰色によどんだ強固なそのシステムの中心にうずくまっている 空の深い蒼さも 峰々に降りそそぐ朝の光の金色のきらめきも もはや再び目にすることはないだろう そして 苦渋に満ちたまどろみの中で ぼくは ただひたすら夢見る この手も胸も すっかり血のぬくもりを失って 透明で冷涼な夜の大気と同化するとき 新しく生え変わった大きな白い翼でもって おまえを 強く強く抱きしめる夢を すると 突如おとずれる静寂 その瞬間 ぼくは実体を失って黒い影となり 両のまぶたに 音をたてて 「永遠」の二文字が刻印されたのだった
オリジナル…http://picott.hoops.ne.jp/tozitasekai.html