背景画について

杉原さんの描く風景のひとこまひとこまは、我々が日常何気なく目にしているはずの、 いや、もしかすると少しも観てはいないかもしれない、事実そのものの光景である。  座礁船は、八束町の大根島を海沿いに走れば目に入るはずだし、斐川平野に浮かぶ田園 風景は、もう目に焼き付いているはずである。                   にもかかわらず、この寂寥感と孤独に被われた風景になぜか温もりを感じるのはなぜで あろうか。                                   先日、この絵を受け取ったとき、杉原さんはこんなことを口にされた。        「座礁した船はどんな風景を見るよりも美しい。あのフォルム、あの色合いは何とも言 えない。海の激しさと厳しさ、そしてそこで営み、体を張る漁人の刻苦、人と自然の闘 いと調和がものの見事に象徴されている」と・・・。至言だろうと思う。       そこには、潔く敗北してなおかつ自然という大いなる存在に向けられる人々の畏敬に満 ちた眼差しが凛としてある。                           高熱に魘されながらも、僅か二日あまりで描いてしまわれたのも、我々同人への心から の激励であったかと思う。                            この絵に適う小説を書くことでお返しができれば何よりである。改めて感謝します。                                   (村上 馨)
杉原孝芳氏のご紹介 昭和24年生まれ、簸川郡斐川町在住。 グラフィックデザイナーの傍ら、油彩、水彩の作品を発表。国展、新制作展に 出品。平成3年光陽展に初出品、以後光陽会賞、文部科学大臣奨励賞などを受 賞。平成13年より画業に専念し、個展を中心に活躍中。 特に水彩画は、透明感のある絵で定評があり、水彩画教室の指導のほか、水彩 展の開催、本や新聞紙上での発表を精力的にされ、水彩画の普及に努められる。 水彩技法書『いきいき水彩画1・4・12号』(日貿出版社刊)では、この地 域の風景を水彩画を通して発信し、山陰の良さを紹介されている。 杉原孝芳氏の画歴 1972 国画会展初入選                        1977 新制作協会展初入選(以後5回入選)              1981 島根洋画会会員推挙                      1991 光陽会展初出品(以後毎年出品)同会関西展大阪市長賞受賞    1992 光陽会展京都展京都府知事賞受賞                1994 光陽会会友推挙                        1995 光陽会展会友秀作賞受賞                    1996 光陽会展会友秀作賞受賞                    1997 光陽会会員推挙                        1998 光陽会展光陽会賞受賞                     2001 光陽会展会員奨励賞受賞                    2002 光陽会展文部科学大臣奨励賞受賞                現在、光陽会会員、島根洋画会会員・常任委員、NHK米子文化センター水彩 画講師 アトリエ   〒699-0644 島根県簸川郡斐川町今在家9−6