瀬本明羅

この世の崖という崖を フォトグラフと絵でしか 見ることのできなくなった ある男がいました その男は かつて何度か 崖を攀じ上ろうとしました しかし 細道が  てっぺんまで  繋がっているにはいるのですが 病んでいる男は 金縛りになって 攀じ上ぼることができませんでした かすかな足跡を残しただけで・・・・・・ そこで男は呟きました この世の 崖からの眺めを 美しい と 思える人の幸せ その崖まで 行けたことを ごく 普通に思える人の幸せ この世に そういう崖があることに こころ躍らせる人の幸せ 男は そういう人を いつのまにか 別の人間と 思うようになりました…… そして その「冒険」の話を  登った人に じっくり 聞いてみたい と  思うようになりました・・・・・・ そしてまた ギリシアの女性詩人サッフォーが 崖から海へ飛び込んだという 伝説が真実であるのか もし 愛に破れて死にいたる その顔が 恍惚としているとしたら それは何故なのか と  「誰か」に聞いてみたいと思ようになりました・・・・・