不思議なベンチ


瀬本明羅


どこかに、うんと大きな街があって、 マロニエなどの林があり、 そこに、小さな白いベンチがある。 見知らぬ世界のひそやかな世界。 ……私は、そこのベンチに座って、 せせらぎの音を聞きながら、 何を思うでしょうか。 過去の映像のフラッシュバック。 いや 梵天の船。 いや いや 母の声。 白日の幻夢の声。 そよ風が吹く中、 スカーフが顔を覆って、 その中で、 私に、 微笑みながら、話しかけてくる。 お前は、 私の胎内に、 お帰り・・・。 そして、 も一度、 私が、 産んであげる。 そしたら、そしたら、 お前どう生きるの・・・。 すると、私は、私は、 ええ、かぁさん、 そしたら そしたら・・・、 私は、息はずませて、 母に答えよう。 も少し、真っ当に生きます。 母が、応えて、 また微笑むと、 私は、突然嬰児になっている。 ・・・そんな、 不思議なベンチ。 どこかに、 ほんとに、 あるかもしれない。 そこに、 行きたい。行きたい。 でも、行けない。 いや、もしかして、行けるかも知れない。 期待していいのかな…。